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経営危機に陥った魚屋さんはどうやって再生したのか?

さて久しぶりのブログです。この間、熊本、大分で大規模地震があり、たくさんの方が被災されました。私も大分は母方の実家であり、未だに多くの親族が住んでいます。心よりお見舞い申し上げると共に、個人として、会社として何が出来るのか、考えていきたいと思います。

 

さて、久しぶりのブログは、私が新入社員の時に、仕事のやり方について、すごく影響を受けた案件の話です。

 

もう十年以上前になりますが、仕事への取り組み方として、いまだに記憶に残っているのが、新入社員時、事業再生に関わることになったある魚屋さんの案件です。この案件をきっかけに事業における問題発見、仮説の重要性を実践で学ぶことになり、その後の仕事の考え方に大きな影響な影響を受けました。

 

(以下、具体的な情報が分からないようにかなり省略しています。) 

 

この案件は、経営が著しく悪化した魚屋さんからの、当時の会社へのコンサルティング依頼により始まったものです。この魚屋さんの1店舗の売上を調べた所、300万円/日(月1億円)の売上が上がっていました(こんなに売れるんだ、スゴイ!と思った記憶があります)。

一方で、魚は卸売業者から仕入れており、仕入れ値を引いた粗利益が70万円/日(23%)。スタッフや店員の人件費や家賃も入れれば、最終的にその店舗だけで、1000万円/月もの大赤字でした。

 

最初、店員さんや社員さんにヒアリングをしたり、売上データ分析を重ねたのですが、店舗では、時間帯別・商品別の売上・利益のようなデータほとんど把握していませんし、把握する仕組みもありませんでした。

僕は入社一年目と言う事もあり、議事録を取るだけの役割でしたが、当時は新人らしく(?)、かなり肩に力が入っており、魚の種類別の売れ筋を調べたら?とかお客さんの年齢や性別はどうだろうか?とか、やみくもに情報をかき集めようとしていました。

 

それなのに、その時のプロジェクトリーダーは事あるごとに私をお店に連れていき、「この魚は美味そうだな。」とか、「この時間にこんなに安くなるんだ。お土産に買って帰ろう。君もご両親に買って帰れよ。」とか、店員さんとバカ話をしていたので、こんなことで大丈夫かな?と不安に思ってもいました。

 

そうこうしているうちに1週間が過ぎ、プロジェクトリーダーが突然、僕に一枚の紙を渡してきました。そこに書いてあったのは、手書きでたった以下5点でした(本当にそれだけ)。

1.300万円/日の時間帯別の売上は細かくはわからないが、店員ヒアリングによると、大体10時~17時が約200万円、17時~21時が約100万円。

2.仕入れ値の倍で販売しているので、本来、300万円/日売れれば、150万円/日の粗利益が出るはずなのに実際は70万円しか粗利益がない(▲80万円/日)。

3.その理由として、店長は売れ残るのを恐れて17時以降は、大幅値引きをしている。

4.まとめると現状は以下の通り(仮説)。

【現状】

         売上     粗利益

10時~17時 →200万円/日   100万円(50%) 
17時~21時 →100万円/日   【?】
日合計    →300万円/日    70万円(23%)

→逆算すると、【?】の部分が-30万円(つまり17時以降は、売れば売るほど赤字)

 5.今後、以上の検証を行った上で、方針を立てる【仕入量を減らし、売れなくても構わないから、17時以降は、必要最小限の値引きしかしない】

 

その後の取組は省略しますが、この改善を行う事により、売上は下がったのですが、粗利益は120万円/日(+50万円/日)になり、1ヶ月でみると、なんと1,500万円の利益改善が実現しました。

【改善後】

         売上     粗利益

10時~17時 →200万円/日   100万円(50%) 
17時~21時 →60万円/日     20万円(33%)
一日合計   →260万円/日   120万円(45%)

 

形になって見るとなんでこんな簡単な事が分からなかったんだろう、と思うのですが、当時は、「情報が整理されていないのに分かりようがない」と半ばあきらめから入っていたように思います。

 

しかし現場では情報がないのが当たり前。その中から出来るだけ手間を掛けずに、シンプルで最大限の効果を目指さないといけないんだ、と学びました。当時のプロジェクトリーダーに後で話を聞くと、「データ分析も必要なんだけど、まずは現場に行って感じる事が一番大切なんだ。このお店は17時以降は値引き待ちをしている人の大行列があってにぎわっている風なのに、大赤字。じゃあその17時以降に、何か問題があるんじゃないだろうか、と思ったんだよね。」とひょうひょうと説明してくれました。

 

一番成果が上がるシンプルな問題を見つける事が出来れば(これが難しいんですが)、その後は芋づる式に改善していく可能性がある事を学んだ案件で、未だに仕事に取り組む上での基本にしています。